今年の通常国会は働き方改革や人作りがテーマ。しかし、本命は憲法改正。自主憲法制定という既成事実を作ることにあるとの見方が一般的だ。だが、憲法改正の論議の困難さを脇に置いたとして、その手続き、なかんずく国民投票をいつ実現させるのかが難題中の難題。国民投票は国会解散が必須条件。その解散のタイミングはいつか。
◎早期解散説の根拠
昨年10月に国会解散があったばかりで、すぐに解散があると言うと驚かれますが、一部の霞ヶ関関係者、永田町関係者の間では、年内解散説が流布しています。それは、憲法改正の発議とそれに続く国民投票に国会の解散時期がリンクしているからです。
国民投票を単独で実施できるかという点ですが、これは不可です。イギリスはBREXITではキャメロン首相が退陣、イタリアではレンツィ首相も退陣などなど、負ければ政権交代は免れません。首相個人の信認投票となる可能性が高いからです。となると、安倍首相も当然、単独での国民投票は避けようとします。しかも、一度、失敗すれば2度目はありません。
安倍首相の信認ではなく、自民党の信認にしたほうが、選挙戦略としては巧妙です。総選挙、解散とのパッケージとする理由です。国会議員を応援している人を動員できるので、選挙対策が打ちやすく、憲法改正の論点がぼやけるという効果を持ちます。○○先生を応援しているのだから、その先生が支持している憲法改正の国民投票にも賛成という構図ができあがるというわけです。
では、国民投票ができるタイミングはいつかということになります。手続きは改正の発議があり、衆参両院の本会議で 3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が憲法改正の発議を行い国民に提案したものとされます。国会で可決のあと、60日から180日以内に国民投票を行うと定められています。常識的には来年、7月の参議院選挙と同時に解散、国民投票を抱き合わせることが考えられます。
しかし、国民投票の前に決める国会の改正発議は来年の通常国会開催中となります。来年4月、5月は天皇の退位と即位があります。また、4月は当一地方選があります。国会での議論が煮詰まらない、あるいは時間切れといった事態や、もしかすると憲法改正反対のデモが国会を囲むかもしれません。そうした騒然としたなかで、天皇即位式です。発議そのものへの反発が国会議員だけでなく、国民からも出てくる可能性があります。また、外国の要人も沢山来るでしょう。騒然としたなかで、政府としてそんなタイミングで憲法改正の発議ができるのかどうか、はなはだ疑問です。発議への反発が出た時点で失敗となります。
となると、来年の夏、2019年7月は実施できません。そのあとは、消費税の増税実施が10月に控えています。増税の景気へのインパクトは前回ほどではないにせよ、相当の影響があると考えなければなりません。2019年の秋以降、半年から1年間くらいは逆風と考えれば、発議、国民投票はほぼ不可能でしょう。(勿論、国民の圧倒的多数が憲法改正に賛成という状況なら別です)
ということで、国民投票を実施するなら今年となります。秋の自民党総裁選ではおそらく無投票で安倍首相の続投が決まるでしょう。無投票ならば、自民党=改憲政党という色彩が濃くなり、自民党支持として国民投票にも支持票が集まる可能性が高まります。こうした状況を作り出すためには、今年の通常国会での末期、6月をめどに発議の可決を目指し、発議した安倍首相を総裁として再度、信認し、その直後の10月頃に国民投票へと雪崩込むというシナリオです。ついでに消費税の引き上げの見送りもパッケージにするかもしれません。
以上、すべて首相支持率、自民党支持率次第です。発議に先立つ憲法審査会がスムーズのいくような根回しも絶対に必要です。
そもそも、憲法改正案の中身すら決まっていない中で、国民投票のタイミングを予想しても無意味かもしれません。がしかし、全ては最終形から動かしていくのが政治です。
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