黒田日銀総裁の続投の露骨なリークをどう見るか。官邸の株式市場への警戒が早期続投リークにつながったのだろう。世界的な株価調整への手段が枯渇していることへの表れではないか。
◎“株価下落対策”としての続投リーク?
各主要メディアは2月9日金曜日、黒田日銀総裁続投を一斉に報じた。任期までまだ2か月もあるので、早すぎるのではないかと違和感があります。しかし、二人の副総裁の任期が3月19日ですので、その後任人事の選任が1か月ほどに迫っていますので、そのタイミングに合わせたと考えれば当然なのかもしれません。
このリーク報道は間違いなく官邸筋からのものでしょう。本来、国会同意人事なので事前リークされた人物について、国会側は除外する可能性があります。しかし、あえて反対する政治家もいなく、しかも官邸筋からのリークがみえみえなので、誰も異論を出さないとみられます。5年前、黒田総裁が当初、任命されたときはあれほどドタバタし、誰それと侃々諤々だった状況と様変わりです。
黒田続投は市場も織り込んでおり、違和感はないのですが、タイミングはまさに政治的判断だと思います。これだけ世界的に株価が変調をきたしているときに、政府は何も手を打つことができません。唯一、黒田続投が株価を支える材料になると判断し、前倒しでリークしたのでしょう。ただし、前倒しのリークということが事実なら、これは官邸の焦りを示したことになります。ほかに打つ手がないということを自白したようなものです。市場はこの焦りをどう読むのでしょうか。気になるところです。
株価に関しての金融政策としてはすでにすべての手段を動員しています。敢えていえば、ETFの購入額の増額くらいしか残っていません。また、リートだけでなく、直接、不動産を購入するという手段も残されています。まさかそこまでとは思いますが、日銀の歴史を振り返れば、日銀は多くの不動産を取得してきました。現在、日銀が所有している不動産の多くは貸出の担保として取得したものです。当面は株価対策なので、これは不動産のバブル崩壊のときの非常手段として残しておくかもしれません(多分ないと思いますが)。
◎副総裁人事も内定のはず
黒田続投をリークした以上、副総裁人事も内定しているはずです。これまでの前例からすれば菅官房長官がすでに該当人物に電話を入れているはずです。雨宮理事の昇格はほぼ確実でしょう。日銀の内部管理を担当する副総裁はやはり日銀出身が適任です。問題はもう一人の副総裁ですが、「国際関係」担当とすると本田スイス大使です。ただし、財務省出身者が二人になることが、どうかと指摘するメディアもあります。しかも、本田氏はかならずしもリフレ派というほどの過激な理論を掲げているわけではありません。もっと現実的な方です。自民党内にはリフレ派がまだ存在しますので、国会でひと悶着あるかもしれません。
また、副総裁に学者という選択もあります。しかし、黒田総裁は学者、理論家ですので、不要と考えれば敢えて学者を充てることはないと思います。日銀執行部は正副総裁で構成しますが、事実上、総裁一人の組織です。ほかの行政組織ではこれほどまでガバナンスが強烈な組織はありません。なにがしかの抑制が働くような仕掛けがあります。
3月初めに国会に正式提示され、与野党の反応、そして何よりも市場の反応がどうなるのか、注目されます。売りか買いか?
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