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弔辞としての森友学園決裁文書改ざん調査報告

財務省が6月4日に公表した「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」。これに対して様々な批判的な論調が目立つ。調査した財務省の秘書課でもなく、検察でもない立場からは特段の事実関係もわからないので、コメントしようもないが、感想をひとつ。

◎情感のこもった唯一の表現

 

 この調査報告書は、今年の3月7日に自殺した近畿財務局職員への弔辞の色彩が濃いということです。朝日新聞が改ざんの疑いをスクープしたのが、3月2日。そして、財務省が最初に改ざんを認めた報告書を公表したのが、3月12日です。非常に素早い対応に驚きましたが、自殺が大きな背景になっているのは間違いありません。そして、今回の報告書では、この方の正義感にあふれた勇気ある行動が記述されています。特定はされていませんが、消去法で自殺された職員とわかります。

 

「近畿財務局の続括国有財産管理官の配下職員は、そもそも 改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からの度重なる指示に強く反発し、平成29年3月8日(水)までに管財部長に相談をした。また、本省理財局の総務課長と近畿財務局の管財部長との間でも相談がなされた。結論として、近畿財務局においては、統括国有財産管理官の配下職員はこれ以上作業に関与させないこととしつつ、本省理財局が国会対応の観点から作業を行うならば、一定の協力は行うものと整理された。」

「会計検査院による近畿財務局への実地検査の開始が近づいてきた平成29年4月上旬に、本省理財局の総務課長から局長に対して、近畿財務局側には強い抵抗感があるとの状況が報告された。理財局長は、必要な書き換えは行う必要があるとの反応であったため、総務課長から国有財産審理室長及び近畿財務局の管財部長に対して、最低限、政治家関係者からの照会状況の記載と、それまでの国会答弁との関係が問題となりかねない箇所については書き換えが必要である旨が伝えられた。
 さらに国有財産審理室長から近畿財務局の管財部次長に対してもこの内容が伝達されるとともに、配下の国有財産審理室の職員がその時点までに作成していた各種決裁文書の書き換え案が改めて送付された。」

 

 ひとりの職員の強い反発があり、それが近畿財務局管財部のなかで「強い抵抗感」となり広がっていたことを淡々と描いています。人間の情感を表現する言葉が使われているのはこの部分だけです。これは明らかに弔辞です。この弔辞のインパクトが報告書の半分を占めているように思われました。改ざんについての内部調査報告書にこうした文章は使われないものです。記述する理由がないからです。
 なお、文末に「整理された」という用語があります。こんな使い方は見たことがありません。当人、および周辺を納得させたという意味でしょうが、奇怪な用語です。
 弔辞を書いたのは、贖罪の気持ちからでしょう。組織を維持するためには、厳格な命令が必要ですが、働く人のメンタルも維持しなければなりません。どこかで、不正を強要された職員の立場を擁護する必要があります。個人的に弔意を伝えたというだけでは、組織の人間は納得しないでしょう。報告書のような公式文書に歴史として職員の擁護を残す必要があったのだと思います。珍しい報告書といえますが、報告書の大きな動機だと読みました。いずれ、こうした指摘は消えていく可能性があります。敢えて、その意義を残しておきたいと考えた次第です。