2019年10月の消費税率10%への引き上げによる消費減退の影響は、政府が想定した以上に厳しいものとなる見込みだ。増税緩和策であるキャッシュポイント還元対策は6月末までだが、すでに延長・継続は必至との見方が台頭している。
◎芳しくない個人消費動向
昨年の消費税率の引上げ後の消費動向が芳しくありません。様々な消費関連指標がありますが、例えば、上昇・プラス傾向が続いていた世帯消費動向指数(二人以上世帯)は、2019年10月、11月と続けて前年比低下しました。この指数は、2014年4月1日の8%への3%の引上げ直後から低迷していましたが、2018年半ばごろになって、ようやく増勢に転じて一服していました。
14年から18年までですから、増税の影響はほぼ5年間に及ぶ影響を与えたことになります(勿論、増税の要因だけではないのですが、主因です)。仮に影響の度合いが前回と同じようなものであれば、今回の増税分は2%分なので、「今後3年間は影響が残る」(シンクタンク)可能性があります。
消費関連の指標としては、景気ウォッチャー調査も有名です。現状DI は消費増税直後の2019 年10 月に36.7(9 月46.7)へ大幅に低下した後、11 月に39.4、12 月に39.8 へ、2 ヶ月連続で持ち直したものの、前回の消費増税局面に比べ、持ち直しのDI 水準が低くなっています(2014 年3 月54.1→4 月38.4→5 月43.5→6 月47.9)。増税後の需要が低迷していることを示しています。
四半期ベースでみても飲食関連、サービス関連、住宅関連が芳しくありません。客単価の低下や利用客数の減少が指摘され、家計動向のDI 水準は相当に低く、消費の基調は弱い状況です。DI調査には、サービス関連は総崩れで、増税の悪影響が続いているという指摘が目立ち、小売関連では、キャッシュレス・ポイント還元が終了したあとの需要減を懸念する回答が寄せられています。こうした動向から、エコノミストの間では、「来年6月末までの時限措置だが、延長は必至」との見方が広がっています。
◎財源額と財政健全化への貢献度
キャッシュレス・ポイント還元の緩和策の財源は、2019年度予算で2,798億円計上されました。ところが、いざスタートすると想定した以上に還元が進み、昨年の19年の補正予算で1,497億円追加されました。1日当たり10億円と想定していたのですが、実際には14億円近い還元が生じています。ポイント還元は今年の6月末までですが、20年度予算にその財源として2,703円計上されています。合計すると7,000億円になります。この2,703億円ですが、還元を求める中小企業者が増えていることもあり、もしかすると不足する可能性もあります。
消費税増税分は年間5兆円程度になります。このうち、社会保障費に1兆円、子育て支援などに1.7兆円が使われ、残りの2.3兆円は借金の減額(あるいは社会保障費に充当)に充てられれます。いまのところの話です。しかし、この1年間に限れば、ここから7,000億円差し引かねばなりません。しかも、還元の期間は9か月分だけです。初年度の手取りは、1.6兆円ということになります。
仮にポイント還元を継続するとなれば、すくなくとも年間9,000億円程度(あるいは、還元率が高とまればそれ以上)、還元に消費者が殺到すれば1兆円の還元になります。これが恒久化されるとどうなるでしょうか。つまり、2.3兆円から1兆円差し引いた額である1.3兆円分が財政健全化に資するという計算になります。1000兆円の借金に対し、1.3兆円の効果しかないことになります。
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