地銀同士の業務提携が進んでいる。従来の提携とは一線を画し、「包括提携」を締結する動きが活発である。包括提携の中身はそれぞれのケースで異なるが、実態は、提携による「競合回避」の色彩が強い。公取の眼をそらすという意図があるのかもしれない。
日銀の金融政策の話題も、マイナス金利を別にすれば、ここ数年、ネタが希薄になってきた感がある。だからということではないが、ここでは閑話休題、日銀の役員人事の基礎知識を整理しておきたい。将来の金融政策を担う人事体制・布陣を予想してみた。
日銀の金融政策の限界から有効なマクロ政策として財政赤字拡大を容認する主張が広がっている。赤字国債の発行残高は増加を続け、PBの黒字化の展望も見えない。厳しい財政状態にも拘わらず、財政赤字拡大を容認する論調の底流に、「今後とも利子率(国債金利)が名目GDPの伸び率を必ず下回る」との前提がある。この条件を満たすなら財政の破たんにつながらず、経済成長を財政政策によって促進できるという考え方である。最近、日経新聞のコラム「経済教室」で評判となった「財政赤字拡大容認論を問う」という3本の論文が掲載された。この論文の共通の論点であった利子率と名目GDP伸び率の関係から、容認論の現実性について考えてみたい。 (PB=基礎的財政収支。新規国債発行額を除いた歳入総額と、国債費(国債の償還・利払い費用)を除いた歳出総額との収支)
アメリカでジャンク・ローンも組み込んだローン担保証券(CLO)が急増している。その投資家に日本の大手金融機関の名前が並び、とりわけ農中の投資額が突出していることが、昨年来から注目されている。金融庁もそのモニタリングを強化する方針を打ち出している。CLOがアメリカの景気悪化によって、デフォルトを含め、どのような事態になるのか、予断を許さないが、世界の金融当局にとってマクロプルーデンスの問題として認識され始めている。金融庁は農中のモニタリング担当にマクロプルーデンスのエースを投入した。
金融庁は9月11日、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」のディスカッション・ペーパーを公表した。この後、パブコメに付されたが、現行の償却・引当の基準を定めた金融検査マニュアルは、今年度中に廃止される見込み。今回のペーパーのポイントを整理したい。
金融庁は8月28日、今年度の行政方針を公表した(正式には「金融行政のこれまでの実践と今後の方針―利用者を中心とした新時代の金融サービス」。金融庁はこれまで金融行政方針と金融レポートを毎年、公表していたが、昨年から両者を合体させ、一般的には「実践と方針」という呼称となっている。ここでは行政方針と表記)。いわば金融行政の施政方針なので極めて重要なレポートと位置付けられている。今年の新しい目玉は、事前に新聞にリークされてしまったが、可変預金保険料率導入の検討がある。ほかにも多くのテーマが列挙されているが、これまでの行政の継続性との観点からこのレポートについて2点だけ指摘したい。
Facebookが6月18日に暗号通貨リブラ(Libra)発行の概要・ホワイトペーパーを公表直後から、各国金融当局でその影響度について検討が進められている。従来の暗号資産(仮想通貨)とは異なり、準通貨としての性格があるため、金融政策、金融システムへの影響がどこまで広がるのかという大きな課題に加え、マネロン対策、消費者保護政策、プライバシー保護も大きな問題となっている。G7のリブラ問題作業部会は、これらの課題について10月までに報告書に取りまとめる予定だ。その規制次第ではリブラの商品性も大きく変わってくることが予想される。リブラの商品性はすでに広く知られているところなので、ここでは「Facebookはリブラで儲けることができるのか」、そのビジネスモデルについて焦点を当てて考えてみたい。
金融庁と財務省は7月5日付で定期の人事異動を行った。遠藤俊英金融庁長官(昭和57年入省)、岡本薫明財務次官(58)の両トップが続投となった。昨年末あたりから続投との噂がながれており、麻生大臣の了解は早期の段階で取れていたようだ。財務次官続投の背景、金融庁幹部の直前の入れ替えと今回の幹部人事異動の特徴をまとめておきたい。(キャリア、人柄等の人物像については説明省略)
日銀は6月20日、共通担保の対象範囲を拡大し、適格性を緩和する措置を決定した。これは日銀と民間金融機関との取引の際に求める担保の対象を拡大するもので、金融緩和の裏付けとなる。4月の金融政策決定会合で基本方針が公表されていたが、その実施細目にあたる。あらためて、なぜ共通担保の適格対象を拡大したのか、また、とりわけ貸出増加支援資金との関係について考えてみたい。